NYU Clive Davis Institute of Recorded Music

2019年取材

New York University(以下NYU)のレコーディング学科にあたるClive Davis Institute of Recorded Musicが今年マンハッタンからブルックリンのジェイ・ストリート(JAY st.)に位置するメトロテック・ センターに移設。それに伴って新設された3Dオーディオに対応する2つのスタジオにVMC-102が導入されました。

NYUは、全世界でもベスト30に入る有名総合私立大学ですが、その中のClive Davis Institute of Recorded Musicは、多くのグラミー賞を受賞しているレコーディング・エンジニアJim Anderson(ジム・アンダーソン)氏が中心となった音楽レコーディングの学科となります。

Jim Anderson

今回の移設プロジェクトは、この学科だけではなく、いくつかの学科がブルックリンのメトロテック・ センターに3年以上をかけて移設を行なっているとのこと。Clive Davis Institute of Recorded Musicは、2019年の春から移設作業を開始し、夏休み明けから新スタジオでの授業を開始しています。

Studio One

Studio Oneには、Dolby ATMOSに対応するレコーディング可能なコントロール・ルームと試聴やマスタリングのセミナーを行うクリティカル・リスニング・ルームの2部屋があり、その両部屋にVMC-102が導入されました。どちらの部屋も全てPMCのスピーカーを用いた9.1.6のサラウンド・システムとなっており、音場補正プロセッサーにはBSSを用いて、その制御もVMCからGPIO出力によって行っています。
コントロール・ルームは、レコーディングにNEVE5088、ミックスにはAvid S-3というハイブリッド・スタイル。
スタジオは、このスタジオがある5階と6階をぶち抜いた余裕のある広さを持つ素晴らしい景色のフロアーとなっていました。



 

Studio Two

マンハッタンにあったオシロスコープ・スタジオの寄付によってできたスタジオで、NEVEコンソールをはじめとしてEMTリバーブや様々なビンテージ機材が、もともとのスタジオをこの場所に復元させる形で作られました。

Studio Three

新設されたAPIのAXS LegacyとGenelecのスピーカーで作られたスタンダードなステレオのレコーディングスタジオ。Studerの24CHマルチトラック・レコーダーも設備されるそうです。

Studio Four

グリニッジビレッジのNYUのスタジオから移設されたSSL 9000KとPMCスピーカーで組まれた5.1サラウンド対応のスタジオ。

以上4つのスタジオはそれぞれニューヨークらしいテーマを持ったデザインがなされていて非常にクリエイティブな雰囲気を持った施設に仕上げられています。またスタジオ以外にも多くのプラクティスルーム、リハーサルルーム、エディットルームが用意され、学生は自由にこれらをブッキングして使えるようになっているという夢のような環境です。全米で1位2位を争う学費の高さというのも頷けます。

専用のテックチーム

Michael Hagen


さすがにこれだけの設備と機材を管理してメンテナンスするためには、専用のテックチームが必要となります。今回のインストレーションで私のサポートについてくれたMichael Hagen(マイケル・ヘイゲン)は、ここのテックチームのメインとして全ての機材、ライセンスの管理、日々行われる各プロフェッサーのセッションにためのセットアップまでこなす為にNYUの職員として雇用されています。

システムを簡素化するVMC-102のセットアップ


この施設は学校ということもあって、毎日違う学生、教員やゲストのエンジニアが訪れ違った目的のために使用することになります。

Studio Oneはその中でも3Dオーディオまで網羅した多様性を求められているため、シンプルなワンボタン操作でシステムを切り替えられるVMC-102が最適だということで採用されました。実際にセットアップしたパネルレイアウトは、ソース兼フォーマットを選ぶボタンが並び、このボタンだけでスピーカーのセットアップと音場補正をきりかえるBSSへの制御を同時に行うように設定しました。

今後もVMC Version 5で予定しているビデオの切り替えなどの制御も期待されており、末永く利用してもらえればと思います。

2019年 山崎取材