ミックス前の下ごしらえ! Auto-Align 2で音質を底上げ

「位相:音楽制作における隠れたキーファクター」では、複数マイクを使用したレコーディングで発生する問題の例を紹介しました。

今回から2回に分けて、それらの問題をさらっと解決してくれるプラグイン、Sound Radix の Auto-Align 2 と Auto-Align Post 2 を紹介します。Auto-Align 2 は音楽の録音、ミックスに、Auto-Align Post 2 はポストプロダクションでの利用に最適です。

Auto-Align 2

Auto-Align 2(以下AA2)は、マイクの位置が固定されている前提で処理を行うプラグインです。そのため、スタジオレコーディングのような固定された環境での音楽制作や録音・ミックスに最適です。

まずは、その効果を実感していただくためにも下記の動画をご覧ください。

動画では再生中に電源ボタンのオン/オフを切り替えています。AA2以外のエフェクトは使用しておらず、オン/オフで音の印象が明確に変化していることを感じていただけるはずです。

位相問題を一瞬で解決!?

次は、使用方法を見ていきましょう。

Pro Toolsでの設定手順

今回は、Pro Tools でARA2プラグインとしてAA2を利用します。以下の環境が必要です:

  • Pro Tools のバージョン:2024.6以降
  • AA2のバージョン:2.2.0以降

手順:

  1. Pro Tools セッションファイルを開きます。


  2. トラックサイズがミディアムサイズ以上の場合には、ARAプラグインスロット、「スモール」以下の場合には、トラック左端のメニューボタンをいずれも「Option」(Mac)キーを押下しながら開き、「エラスティックオーディオ」>「Auto-Align 2」を選択します。

  3. 画面下部にAA2のウインドウが表示されすべてのトラックが読み込まれている状態になります。


  4. 「Align」ボタンをクリックします。

これだけで処理はほぼ完了です。ワンクリックで全トラックの位相調整が可能です。

処理の効果を視覚的に確認

処理前後の比較

AA2のスイッチのオン/オフを切り替えることで、処理前後の波形や周波数ごとの相関関係を確認できます。

  • Correlationバー:上向きで相乗、下向きで打ち消しを示します。

以下の動画では、グループ3のトラック「EGtr SM57」(DI入力)の波形が青色で表示されています。同じグループの「EGtr RB4」(アンプ前マイク)の波形(薄い灰色)が、オンにしたタイミングで左向き(時間を遡って)に移動し、周波数の相関関係が修正される様子を確認できます。

インターフェースの項目について

Group

「Align」ボタンをクリックするとAA2がすべてのトラックのオーディオ認識して、それぞれの相関関係を検出して自動的にトラックがグループ化されます。今回の場合、ドラム、ベース、ギターx2の編成のバンドですが、「Align」を実行するとそれぞれのパートごとにグループ化されます。

Time

AA2では、各グループごと自動的に設定されている「Performance Time」のトラックに合わせて時間的な調整が適用され、グループすべてのトラックが周波数ごとに位相の回転させることで調整が適用されます。

上記の「Time」では「Performance Time」のトラックに対してどれくらい時間な調整が適用されているかを示しています。上記の図では「ms」(ミリセカンド)で表示されています。こちらは「サンプル」「センチメール」「インチ」に表示を切り替えることが可能です。

負の値で表示されているトラックは、時間的には負の方向(左向き)に波形が移動しています。また、センチメールに切り替えることで、「Performance Time」に設定されているマイクに対してどれくらいマイクが離れているかを確認することも出来ます。

「Performance Time」は基本的には、DIや距離が最も近いマイクが選択されますが、任意での変更が可能です。例えば上記のケースでは「Room」に合わせることでドラムグループが全体的に「10.20」ミリセカンド分後ろに下がります。好みに応じて「Performance Time」の設定を行うことができます。

また、トラックごとに値の前後に表示されている「ー」「+」をクリックして、波形を別の前後の相関ポイントに移動させることが可能です。

他の相関ポイントでは、選択したトラックとグループ内の他のトラックとのタイミングは緩くなるものの、グループ全体で強固な位相の相関関係は保持します。また、移動することで、スペクトル位相最適化や極性反転が変化します。これらはすべてAA2により、自動で計算されています。

Spectral

「Spectral」では、左→右 が 低域→高域 の周波数帯にてどのように位相が回転されているかを示しています。

緑色は0°(そのまま)、赤は180°(反転)していることを示しています。それ以外の色は具体的な値は公開されていませんが、その中間の角度の回転を示しています。

また、これらの機能はグループごとにオン・オフの切り替えが可能です。

「Time」をオフにした場合、時間的な波形の編集は行わずに周波数ごとの位相の回転だけで調整が行われます。また、「Spectral」をオフにした場合には、位相の回転は行わず、180°の位相反転処理のみ必要なトラックに対して適用され、縁取りの色でそのまま(緑)、または反転状態(赤)を示します。

「Time」「Spectral」ともにオフにした状態です。これらの変更を行った場合には、変更を適用するために、再度「Align」を実行する必要があります。上記のリストでは、「OH」「Room」のみ「polarity」が反転しています。

その他、詳細な情報はSound Radixの 製品マニュアル(英語)で確認いただけます。

Auto-Align 2 は、EQやコンプレッサーを使用する前に位相を整えることで、ミックス全体の完成度を飛躍的に向上させる強力なツールです。ミックスの土台を作る「下ごしらえ」として、ぜひ活用してみてください。

Auto-Align 2 は タックオンラインストアでもお求めいただけます。

次回は「Auto-Align Post 2 」をご紹介します。