Auto-Align Post 2
今回は、Auto-Align Post 2(AAP2) を紹介します。このプラグインを使用することでマルチマイクでのダイアログ録音で起こりがちな位相のずれによる音痩せや意図しないリバーブ感などを1クリックで取り除くことが可能となります。
前回と同様にPro Tools ARAでの利用を紹介いたします。Pro Tools ARA2で利用するためには、Pro Tools、AAP2のバージョンが以下の通りである必要があります。
- Pro Tools のバージョン:2024.6以降
- AAP2のバージョン:2.2.0以降
まずは、実際の効果をご確認ください。
こちらのセッションファイルは、リベリアマイク(Lav)とカメラマイク(Boom、ステレオ)(44.1kHz、24Bit)で収録していますが、視覚的かつ聴覚的にプラグインの効果をわかりやすくする為に、Lavトラックを複製することで、3トラック「Lav.dup1~3」を追加しそれぞれのトラックに対して、以下の編集を行っています。
- Lav.dup1:複数のクリップに分割し、それぞれのクリップを前後に100~1000サンプル程度ずらしています。
- Lav.dup2:トラックを全体的に500サンプル程度後ろにずらしています。
(サンプリングレートが44.1kHzの時に、時間にして約 11.34msの遅れ) - Lav.dup3:トラックを全体的に2000サンプルほど後ろにずらしています。
(サンプリングレートが44.1kHzの時に、時間にして約 45.35msの遅れ)
*Auto-Align Post 2は、最大±100msの補正が可能です。マイク間の距離にして約34mまでの時間補正が可能となっております。
下記の動画を再生し、違いをご確認ください。
OFFの状態からスタートします。かなりあからさまですが、最大0.045秒のタイミングのずれによる音の輪郭のぼやけがエコーのような効果で顕著に確認いただけます。プラグインを有効(ON)にしたタイミングで、音に厚みが増して輪郭がはっきりとなっていることをご確認ください。また、視覚的にも波形が左右に調整されて、各トラックの左側に表示されている位相の相関メーターが上向きに触れている(信号が加算された状態になっている)ことも確認いただけます。
下記の図は、波形の拡大した内容です。2段目のLavトラックがリファレンストラックに設定されています。各トラックの波形が水色、ピンクで表示されている波形がリファレンストラック(Lav)の波形となります。
ONに切り替えると各トラックがリファレンストラックに一致していることが確認いただけます。また、動画と同様に各トラックの左側のフェーズの相関メーターが上向きに触れて、リファレンストラックの信号に対して加算されている関係にあることを示しています。

次は、使用方法を見ていきましょう。
Pro Toolsでの設定手順
1.Pro tools セッションファイルを開きます。

2.トラックサイズがミディアムサイズ以上の場合には、ARAプラグインスロット、「スモール」以下の場合には、トラック左端のメニューボタンをいずれも「Option」(Mac)キーを押下しながら開き、「エラスティックオーディオ」>「Auto-Align Post」を選択します。

3.画面下部にAAP2のウインドウが表示されすべてのトラックが読み込まれている状態になります。
4.位相を揃えたいトラックをShiftキーを押下しながらすべて選択します。
ここでは、2段目のLav以外のトラックをすべてクリックして選択します。

5.「Set REF」をクリックしてそのトラックをリファレンストラック(Refaerrence Track)に設定すると、同時に対象トラックが読み込まれてアライメントの処理が開始されます。

基本的には以上で完了です。
必要に応じてクリップ単位でアライメントを解除したり、動的な時間調整の有無、フェーズローテーションによる調整の有無などを調整することも可能です。

Auto-Align Post 2は、マイク同士の距離の変化に対して動的に対応するために、編集対象として選択された各トラックがそれぞれレファレンストラックに対して位相の時間的な調整とフェーズローテーションによる調整が行われます。 前回の記事で紹介したAuto-Align 2との仕様の違いとしては、このリファレンストラックの有無も上げられます。
Auto-Align 2では、時間的な基準としてPerformance Time トラックが設定されましたが、そのトラックに対しても、フェーズローテションによる調整が適用されます。Auto-Align Post 2のリファレンス・トラックはその名称どおり、一切変更は適用されません。
DaVinci Resolve Studio ネイティブサポート対応(バージョン2.3)
2024/12/17にリリースされたバージョン2.3にて、Blackmagic DaVinci Resolve Studio でのネイティブサポート対応により、「ワークフロー統合プラグイン」として利用可能になりました。

このアップデートにより、以前は他のプラットフォームに書き出し・編集が必要だったAuto-Align Post 2による位相合わせの編集が、DaVinci Resolve Studio内で完結させることが可能となります。
注意:Auto-Align Post 2は「Fairlight」内のプラグインリストにも表示されますが、Audio Random Access (ARA) が必要なため、インサートプラグインとしては動作しません。「ワークフロー統合プラグイン」としてご利用いただく必要があります。
科学技術賞を受賞!
Auto-Align Post 2 が映画芸術科学アカデミー(AMPAS)より科学技術賞(Scientific and Engineering Award) を受賞しました!
この名誉ある賞は、映画やテレビのポストプロダクションにおいて、マルチマイク録音の位相を補正し、自然で力強いダイアログを実現する Auto-Align Post 2 のコンセプト、設計、開発がもたらした革新的な貢献を称えるものです。
Sound Radixの製品ページからインストーラーをダウンロードし、14日間のTrial版として動作をお試しいただけます。デモ版のアクティベーション方法はこちら(英語)で確認いただけます。
Auto-Align Post 2は、タックオンラインストアでもご購入いただけます。