NAMM2024 でも先行お披露目されて注目を集めていたMIDIの新しいワークフローを実現するMIDIエフェクト・プラグインへの対応や、SibeliusとPro ToolsのMIDIコピー&ペースト対応、Dolby Atmos カスタム・ライブ・レンダリング機能強化、Sketch機能強化などが実装されました。
- MIDIエフェクト・プラグイン対応
- Pro Tools とSibelius間でのMIDIデータコピー&ペースト機能実装
- Dolby Atmos カスタム・ライブ・レンダリング機能強化
- Pro Tools Sketch 機能強化
- ARAウィンドウの独立タブ表示
MIDI エフェクト・プラグイン対応
MIDI関連機能の大幅強化によりMIDIエフェクト・プラグインに対応、リアルタイムな調整やオートメーションを使用できるようになりました。3つのAvid プラグインと3つのサードパーティー製プラグインがリリースに付属します。
Avid プラグイン(Intro, Artist, Studio, Ultimateで使用可)
- Note Stack
ひとつのMIDIノートに対して、複数のノートを操作できるプラグインです。設定し、自動で和音をMIDIとして再生というフローが可能になります。 - Velocity Control
入力したMIDIノートのベロシティを変更して再生できるプラグインです。ノートピッチやベロシティによって反応する音にフィルターをかけたり、ランダマイズ機能を使用して効果をランダムにかけたりすることができます。 - Pitch Control
MIDIノートのピッチを簡単に移調できるプラグインです。ベロシティやピッチの値に基づいて移調するかどうかを変更することもできます。
サードパーティープラグイン(Artist, Studio, Ultimateで使用可)
- Modalics EON-Arp
リズミカルでメロディック、複雑で高度なフレーズを作成できるアルペジエーターです。プリセットも複数用意されており、インスピレーションを高めます。 - Audiomodern Riffer 3
MIDIノートのピッチ、デュレーション、ベロシティ、デンシティを組み合わせてリフとシーケンスを生成します。ランダマイズ機能もあるので、無作為な生成が可能です。スケール(音階)はMajorやMinorだけでなくドリアンや日本音階などリストから57種ものスケールを選択できます。カスタマイズした音階を追加することもできます。 - Pitch Innovations Groove Shaper
記号や音符表示モードなど、視覚的にわかりやすくリズムを生成するシーケンサーです。ハイハットやベースなどリズムパターンを作成するときに役立ちます。
これらのMIDIエフェクト・プラグインは組み合わせた利用も可能なので、リフを作りつつインターバルをランダムに再生というようなフローも可能で、制作の幅が広がります。
Pro Tools とSibelius間でのMIDIデータコピー&ペースト機能実装
同時にリリースされた楽譜作成ソフトSibelius 2024.3との間で、MIDIデータをコピー&ペーストでアプリケーション間をシームレスに共有できるようになりました。作曲や編曲のワークフローが大幅にスピードアップ可能です。
今まではPro Toolsで作成したMIDIデータを一度エクスポートし、Sibeliusでレイアウトやクオンタイズなど調整してから作業、というひと手間かかる状態でしたが、今回のアップデートでMIDIノートだけでなくテンポや拍子記号などを含めてSibeliusへペースト可能なので、楽譜の作業開始を大幅に早められます。
また、Sibelius上ではMIDIのオートメーションを調整するのが難しく、Sibeliusで作成したデータをPro Toolsへ移動してから調整するケースが多いですが、Pro Toolsで調整したオートメーション(MIDIメッセージ)を含めてSibeliusへペースト可能なので、Pro Tools上で調整したデータを反映してさらにアレンジといったフローも可能になります。
Dolby Atmos カスタム・ライブ・レンダリング機能強化
Pro Tools 2023.12で実装されたDolby Atmos®ミックスの内部レンダリングですが、今回の2024.3ではバイノーラル、2.0、5.1、7.1、5.1.2、5.1.4、7.1.4 (Pro Tools StudioおよびUltimate)、9.1.6 (Ultimate) のカスタム・ライブ・リレンダリングが可能になりました。グループ機能を使用してミックスの一部をレンダリングすることもできます。
また、カスタム・ライブ・リレンダリングによって遅延補正されたステムをセッションに直接出力できるようになりました。当初のヘッドフォンやラウドネスのストック・リレンダリングは引き続き使用できますが、以下の違いがあります。
ストック・リレンダリング
- フルミックスのリレンダリングのみを許可し、特定のフォーマットをサポート
- ラウドネス: 5.1および2.0
- ヘッドフォン: 2.0およびバイノーラル
- Pro ToolsのH/Wバッファサイズに従い、必要に応じてレイテンシー・モニタリングを低く抑えることができます。但し、バイノーラル処理は、より大きなバッファサイズでのみ使用可能です
- Dolby Atmos Rendererウィンドウのミュートをフォロー
- バウンス不可
カスタム・リレンダリング
- Dolby Atmos内部レンダラーがサポートするすべてのフォーマットをサポート
- Pro Tools H/Wのバッファサイズ設定に従わない – 最高のパフォーマンスを得るために、常に可能な限り高いバッファサイズで動作するため、レイテンシーの低いモニタリングには使用できません。これは、H/Wバッファサイズの設定に関係なくバイノーラル処理が可能であることも意味します。
- Dolby Atmos Rendererウィンドウのミュートに従わない
- バウンスミックス・ウィンドウからバウンス可能
その他のDolby Atmos改善点:
- カスタム・ベッド・サブパス
- Dolby Atmosタブのベッドにカスタム・サブパスを追加できるようになり、Dolby Atmosを利用した以前のPro Toolsセッションとの柔軟性と互換性が向上
- 追加のADMメタデータ
- WAV ADM BWF ファイルに関する追加情報を、セッションデータのインポート・ウィンドウで表示
- ADMインポートの簡素化
- WAV ADM BWFファイルをインポートする際に、互換性のあるパスを再利用するようになり、必要な I/O設定構成の量が減少
- Dolby Atmos Rendererウィンドウのローカライズ
Pro Tools Sketch 機能強化
Sketch からPro Tools 編集ウィンドウ間のドラッグ&ドロップ機能の改善、Pro Tools セッション・フォルダの保存時にSketch ドキュメントの自動ピン留めなど使用感に直結する細かな機能が更新されました。
ARAウィンドウの独立タブ表示
Pro Tools 編集ウィンドウの下部で利用できるCelemony Melodyneとクリップエフェクトのタブを、独立した別々のウィンドウとして表示できるようになりました。フルスクリーンモードや別の画面に移動も可能で、ウィンドウサイズは一度保存すれば次回以降も継続して利用可能です。