株式会社 HALF H・P STUDIO 様

株式会社 HALF H・P STUDIO 様

AVID S6_ BOF3 STAGE 5/PrePro

ハーフエイチピースタジオ様の海外コンテンツに対する日本語吹き替え作業がメインとなる幡ヶ谷 BOF3 内のダビングルームであるSTAGE 5が、この度大規模改修 ! D-ControlからS6になりました 。

また貴社初となるDolby Atmos Homeのダビングルームとして大変身を遂げました。大規模改修に関する経緯と導入後の感想をお伺いしました。

まず経緯のご説明です。

一番最初にこのスタジオ改修のお話を頂いた際、コンソールの選定にはかなりお悩みになられてました。

国内デジタルミキサーでも良いかも…と。STAGE 5はアフレコをする部屋では無く、メインはダビングルームというコンセプトはそのままだったので、タイミングが良くなった時点で S4 のご案内をさせて頂いたところ、それならSTAGE 6で実績のあるS6にしよう!という機運が高まり 、S6の導入が確定しました。

もちろんオーディオインターフェイス兼モニターコントロールセクションにはMTRXをチョイス。

このメイン機材の選定には、然程無理なくご提案が進みました。

Avid MTRXの上にある1U機材がDolby Atmos HT-RMU w/Mac miniです。

SI時に平行してサラウンドフォーマットを5.1chからDolby Atmos か7.1ch にアップデートするプランが並行していたのですが、Dolby Atmosの必要性を問われ始めてました。個人的には どの会社様も営業的なファクターで、大体このようなストーリー展開になります。妥協することも辞さない状況下であったご事情も有りましたが、欲しいという現場のお声をご支援しながらも紆余曲折しつつ、最終的に素晴らしい結果が得られました。
こんな経緯を前振りし、早速ユーザー様のお声をお伝えさせて頂きます。


タックシステム 益子(以下[タ]): 今回Dolby Atmos Homeとして大変身を遂げたSTAGE 5ですが、まず、率直な感想をお聞かせください。


ハーフエイチピースタジオ 手塚様(以下[ハ]):Dolby Atmosも実現できてよかったです。


[タ]: 本当にこのスタジオは音がいいですね。モニタースピーカーの構成が絶妙でしたよね。


[ハ]: はい。選んだ製品は、フロントにGenelec S360AP 3つ、リアとサイド、4本の天井スピーカーがGenelec 8341AP、そしてLFEに Genelec 7370APとなっています。いくつか候補は考えていましたが、 同社のカタログでDolby Atmos Homeの組み合わせとして書かれていたものを参考にしました。


[タ]: その後メーカー様へこの構成でのご提案を確認したところ、7370APを2台にした方が良いとご助言を頂きました。お部屋サイズに対しては、ややオーバースペックなのでは?と疑念はあるももの、メーカー様からの推奨構成ですから、迷いなくお話を進めたのを記憶してます。


[ハ]: 各スピーカーの音質に大変満足しています。

[タ]: これ、お引き渡し直後の仕込みが終わった際、関わった会社の方々へメールしてましたよね!メールを頂いた時、この仕事に関われて本当に良かったと心から思いました。

コンソールは当初悩んでましたよね?確か…国内デジタル ミキサークラスで良いとお伺いしていたはずです。それを聞いた時、個人的には絶対にS6まで引き上げるぞ !って思っちゃってました。
今までがD-Control 32 Faderのシステムだから。。。って気持ちもありました。実際にそのあたりの当時の心境をお聞かせください。


[ハ]: ひとつあったのは、今回の改修工事は建築工事が絶対に伴う大規模なものとしてスタートしました。

そこでまず柱として最低でも 7.1chサラウンドフォーマット、もちろん理想はDolby Atmos Homeに対応をすることを目標にしていました。

加えてPro Tools HDXを動作させてる Mac Pro 本体や4K 対応を想定したビデオ周りのシステム変更、老朽化の進んだD-Contorol、Pre Pro側もD-Controlですから、2部屋同時のメインコンソールの置き換えを考えました。

若いスタッフも増え、Pro Tools依存のオペレーションが進むことで、コントロールサーフェイスと同等にキーボード&マウス依存率が上がっています。したがってコンソールライクなコントローラーへの大型投資には疑問があったのも事実です。


[タ]: 同様のご意見は、他のお客様ともいつも話題になります。

[ハ]: しかし、コンソールの選定はDolby Atmosというキーワードで、途中から大きく動くことになりました。


[タ]: お話を頂いた時 、スピーカーレイアウトを7.1 chに変更するなら、あともう少し頑張っていただいて、トレンドに成りつつあるイマーシブオーディオである『Dolby Atmos Home』対応にして欲しいと考えました。Dolby Atmos Homeに対応することで、御社の営業にとって大きな武器になるという変な確信があったのも事実です。Dolby Atmos Homeというフォーマットがいつの間にか、世間一般ではより身近なフォーマットになってましたし。今年販売されたテレビで一般的な普通モデルにもバーチャルで DolbyAtmos 再生ができるモデルが登場ていますし、事後のお話にはなりますが、今、iPhoneだってDolby Atmosに対応しました。ひょっとしたら今や電車で横に座っている人が Dolby Atmos 体験してるかもしれません。それなのに、制作インフラというか。まだ国内には現在数える程度しかDolby Atmos Home対応のダビングスタジオが存在しません。これって、我々の業界にとって、大げさですけど由々しき事態ではないでしょうか。このままだとDolby Atmos Homeコンテンツ制作という、未来のある仕事が海外に流出してしまうのでは?と、やや大げさにアピールさせてもらいましたもんね。けど真意は本心から出ていて、それを少しだけ営業トークとして御社とのお打ち合わせの際にDolby Japan様もご支援頂きながらお話をしたのが思い出されます。


[ハ]: 我々技術者もDolby Atmosには大変興味を持っていました。実際に仕事が有る、無いにかかわらず、技術者としては是非とも関わっておきたかったし、何よりもDolby Atmosの話が出てからは、実現して欲しいと思い続けていました。様々なメーカーの方のご意見などのお力もあり、弊社としても、結果問わずやってみよう!という結果になったことは、喜ばしいことでした。


[タ]: そして… Dolby Atmos Homeのダビングルームなら、コンソールはS6ですね 。 。 。という流れにしてしまいました。

Dolby Atmos Home対応にすることが確定し、途中からはDolby Japan様にも技術支援して頂きながら具体的なお話が進み始めましたね。建築性能的なスペック要求を一通り満たせると判った時、HT-RMUまで導入しよう、という流れが予想外に進みました。そのあたりはどのようにお考えでしたか?


[ハ]: やるならば、徹底的にやれること全てに対して対応をしておいた方が将来性があると感じました。途中でソフトウェアレンダラーである”Dolby Atmos Production Suite (Plugin)”でも良いのでは?と何回も益子さんからもご提案を頂きましたが、弊社の仕事柄、万が一弊社のクライアントから納品ファイルをオーサリングファイル形式同様な受注をすることになった場合 ( . a t m o s フ ァ イ ル ) 、それを受注した際に、他社のスタジオを借りるような中途半端な終わり方になることだけは、絶対に避けたかったのです。もちろん普段使う中で簡単にセッションを作れるというオペレーション負荷を軽減したい気持ちも大きな理由のひとつです。


[タ]: 実際に完成してDolby Atmosのお仕事が多く受けれると良いですね。


[ハ]: Dolby Atmos Home対応したことは、既に弊社にとって大きなプラスになっています。これまで以上に若手スタッフが新しいシステムに触れ、より一層モチベーションが上がりました!

本当に大きな収穫だったと感じています。


[タ]: 御社2台目となるS6はどうですか? またMTRXとの組み合わせと、STAGE 6のVMC102との組み合わせの違い等による感想をお聞かせください。


[ハ]: S6は既に利用していましたから、この製品に対する特別なことは今回あまりありませんでした。ただ前回同様ではありますが、S6を導入する場合、コンソールデスクを標準の足にはせず、自分達の使い方に合わせたデスクを作ろうと初めから考えてました。今回は2回目なので初回の時の問題点と言いますか。作ってみたら、後から気がついた点があった訳です。具体的なポイントは、フェーダー手前にキーボード、マウスの場所を確保をしました。それと我々の仕事柄、作業中に台本を常に見なくてはなりません。前回はスクリプトトレイを使ったのですが、これだとS6をとっさに触りたいときに台本が邪魔になってしまうのです。どちらも優先したい事でしたので、今回思い切ってデスクに台本置きスペースを確保しました。結果的に机は大きくなりましたけど、大変満足のいく結果でした。


[タ]: 機能美ですね!特注デスクならではのメリットです。

台本が置けるスペースを設けた特型Avid S6デスク


[ハ]: それとモニターコントロール方法は、割と悩む事無くMTRX1 台で全てを終わらせたい。シンプルにしたいと思いました。TAC 製のVMC-102も性能はもちろんの事、外部コミニケーションやモニター制御が思い通りになり、大変素晴らしいのですが、STAGE 5はダビ ング作業が円滑にできればいい、そんなに多機能では無くてもシン プルなものが存在していれば、それでこの部屋は事足ります。S6で MTRXをコントロールできるのであれば、いっそこれがこの部屋には 一番じゃないか?と考えました。


[タ]: 確かに毎日の使い勝手もさることながら、シンプルな構成 であればトラブル時の対応も、シンプルになります。それとMTRX をモニターセクションとして利用しましたが 、XMONは比較対象としては… (苦笑)ですけど、実際MTRXに変わった事で、音質は もちろん、他のメリットもありましたか?


[ハ]: お答えには少しそれた内容になりますが、個人的には12chも のサラウンドフォーマットであるDolby Atmos Homeに対応する上で、特に既存サラウンドフォーマットのようにベースマネージメントへの考えが最後まで悩むことになり ました 。その中で MTRX に追加したSPQカードオプションが入っているという支えがあったから … 最終的な音響防衛ツールの存在は大きかったです。それぞれ単独で オーディオインターフェイス、モニターコントローラーだけの機材な ら 、追加設備をもっと悩んでたかもしれません 。MTRXはたった2Uで見た目がシンプルなのに、実際には内部ルーティングが複雑だったのは予想外でしたけど、それでも自分のやりたいオーディオルーティングが 、ほぼ実現できま した 。 MTRXは正真正銘このスタジオの要になっている機材です。隣接しているPre ProのProToolsシステムも 、HT – RMUの音声もDanteネットワークで接続しているのは時代を感じますね 。L A N ケーブルだらけなシステムです。


[タ]: それと自分的に印象深かったことが1つございます。S I のご案内をしている際 、ワークビデオを Mac本体画面 にしようという 、個人的なトレンドをご案内した際、結構最後までお悩みになられてましたが。


[ハ]: 既成概念として、ワーク映像は SDI 映像信号で映像信号として出さなければ、とずっと思っていました。今回のご提案が Mac の HDMIやDVI、いわゆるPCディスプレイ信号がなぜ SDIになるのか? それで本当に良いのか?という疑念があったのは事実です。けどこれでの運用実績のご説明や大きなコストカットになる点、そして何よりもこれから放送から配信へ需要がシフトした際、スケーラブルな規格で物事を考えた方が良いのかな?とも考えたのです。また現実問 題として、稀に変な映像画角のQ T ファイルとかが 海外から来ることもあり 、普通の S D I 信 号でそのままだと出力 できないこともありました。今回のプランでは Mac の画面上に表示できさえすれば、フレームレートや画角に左右されないワークシステムになるという大きなメリットが、最終決断材料になりました。実際、作業的にも全く問題のないシステムでした。


[タ]: 最後に1つお伺いします。これからDolby Atmos Homeスタジオを作ろうと考えている方々へメッセージをお願いします。


[ハ]: 新しいスタジオの形になったこと、特にDolby Atmosに対応できたことで、繰り返しになりますが、確実に若手の士気が上がったことが会社としてもっとも大きなメリットでした。思い返せば、実際に自分が若手時代の時 、スタジ オが5.1 ch サラウンドスタジオ に生まれ変わった時、とても興奮しましたよ、多分時代とフォーマットは異 なりますが、自分の経験してきた良い思い出が、若手にも経験してもらえてよかったです。これからDolby Atmosコンテンツ制作の仕事 が次々入ってくるのかは、正直な所まだ解りませんが、常に挑戦できる環境ができたことによって、それは若手の成長にとって最も有効な手段だと思います。
最後に … 今回の工事に関わった日本音響様 、( 株 ) 浜田の林様 、タックの皆様、ありがとうございました。新Mac Pro…待ってます。


自身2事例目となるDolby Atmos Home対応ダビングスタ ジオの工事を経験させていただけたこと、デジタルミキサー からAvid S6 & MTRXへシフトしてくれたことに対し、心からお礼申し上げます。
またこの工事に関わった関連企業の方々にこの場にてお礼申し上げます。
STAGE5から作られるDolby Atmos Home作品、待っています!(自宅のサウンドバーで…体感したいです)

*この導入事例は、TACインフォメーションVol.54 Winter 2019掲載記事です。