DADman5.8アップデート!~切り替わるルーティング活用法~

本記事ではNTP TechnologyのソフトウェアDADmanに5.8から追加された新機能「Control Pack」について紹介します!

「Control “Pack”」と聞くと、追加のオプションのように感じる方も多いのではないでしょうか?
こちらはなんとアップデートすれば無料で使用できる新機能かつ、使わない手はないと言い切れるほど、皆様が欲しかったアップデートですので要チェックです!

「Control Pack」で、できること。

NTP TechnologyやAvid製のインターフェースをお使いの方であれば、もちろんご存じのDADman。
ルーティング設定のほか、インターフェースの同期設定、モニタープロファイルの作成などを行う、必携必須必需のソフトウェアですね。

今回のアップデートで追加された機能「Control Pack」は、NTP Technologyが提供するDAD Thunder | Core シリーズのルーティング設定を、特定のシグナルをトリガーにして切り替える機能です。用途としては、メインのシグナルが何らかの障害によって喪失した場合に、同期しておいたサブのシステムへ切り替える冗長化や、シーケンスによる信号をトリガーに、意図してソースを切り替えることが可能になります。

気が付かない、その精度。

切り替えと聞いて、皆さんが気になるのはその速度だと思います。
この切り替え速度は、切り替えをトリガーするシグナルによって異なりメーカー公称では、

  • パイロットトーンでは約1ms以内
  • DADman や外部コントロールパネルを使用した際は0オーディオサンプル以内
  • AE6トリガーでの切り替えでは1オーディオサンプル以内

となっています。AE6に関しては次の項にて!

AE6とは?

DADmanの5.8へのアップデートではControl Packの追加に合わせてシグナルジェネレーターが2種類追加されました。パイロットトーンとしても使用可能なオシレーターとAEというデジタル信号です。どちらのシグナルジェネレーターも、システム内のソースとして使用でき、複数の出力に自由にルーティングが可能です。AE6信号では生成されたすべてのサンプルで同じデジタルシーケンスを持っているため1サンプル内で信号が正しいかどうかを判断します。

このAE6を検出する機能は今回のアップデートに合わせて、すべての入力に搭載されました。そのため、すべてのデジタルインターフェイスをトリガーの受け口に設定することが可能です。ですが、アナログインターフェイスまたはサンプリングレートコンバーターを介して転送すると破損してしまいますので、デジタル転送やDADman上でのルーティングでご活用ください!

詳しい説明。

ルーティングのプリセット(buckets)はDADmanで設定され、デバイスに保存されます。
1つのプリセットには最大256ch x 256chのマトリクスを持つレイヤーを4つまで設定することができます。かつ、このチャンネル数はルーティングできる数ですので、サンプルレートに影響されません。



例えば:プリセットAが有効なとき、通常はレイヤー1を使用しているが、特定のチャンネルにシグナルが入っている間レイヤー2に切り替える。といった使い方が可能です。

このトリガーにする信号はDADman から手動でルーティングするか、外部制御デバイスを使って実行することが可能です。信号検出には、パイロット トーンまたは AE6 デジタルを使用できるほか、MADI および AES3 のポート レベルでもトリガーすることができます。

設定方法

実際の設定ウィンドウはこちらです!(メニューバー>Settings>Routing Presets)

左の欄がプリセットとなり、一番大きな項目です。(最大32プリセット)
プリセットの名称と変更するチャンネル数を指定します。(最大256ch)

右側上の欄がトリガーソースです。(Signal,AE6,port)
○○ポートの△chにトリガーソースが入ってきたら反応するか指定するエリアです。
4つのトリガーソースを4パターン設定することが可能です。

右側下の欄が、アウトプットへ何をルーティングするか、となります。


例として、今回はDanteの1~8chへMadi coaxをルーティングする切り替えを作成してみました。

  1. Madi coaxの33chへSignalが入ってくるとMadi coaxの1~8ch
  2. Madi coaxの34chへAE6 Signalが入ってくるとMadi coaxの9~16ch
  3. Madi coaxの35chへSignalが入ってくるとMadi coaxの17~24ch
  4. Madi coaxの36chへAE6 Signalが入ってくるとMadi coaxの25~32ch

という形で切り替えが可能です。

大から小まですべてを兼ねるラインナップ

NTP Technologyが提供するDAD Thunder | Core 製品は、DADmanによって優れたI/Oとルーティングが可能です。現在では9Sampleのレイテンシーと双方向256ch@96kHzという多チャンネルを備えたラインナップを3機種展開しています。

これらのインターフェースはDADlinkに対応しており、ほぼ遅延なしでの相互通信もすでに実現しています。このラインナップと機能によって、小型から大型まであらゆるシステムを低遅延に切り替える、柔軟性と汎用性に優れたシステムが実現されます。

さいごに

やはり大規模なライブにおける低遅延での回線の管理が課題としてあったようです。あらゆるセクションにシステムが存在する昨今、そのすべてで包括的な管理というのはかなり難しいことですが、ControlPackを使うことで実現できるようにしたということです。
ステージにいる某世界的アーティスト自身のインターフェースからもらい受ける回線(実話)、トークバックとして利用する回線(例)など、複雑になりがちな処理を外部のコントローラーからプリセットを呼び出すことで、簡単に、かつアーティストの意思に沿った形で、低遅延で合理的に解決することができたようです。

今までよりも、もっと自由自在になったDADman 5.8へアップデートしてみてはいかがでしょうか?